こんにちは、臨床心理士のモコです。前回に続き、心が疲れた時に読みたくなる本の紹介です。今回は、【「前向きに生きる」ことに疲れたら読む本】です。のめり込んで一気に読んでしまったくらい、お気に入りの一冊です。
1.本の概要
著者はお寺のお坊さん?!
こちらの本を執筆されたのは、南直哉(ミナミジキサイ)さん。タイトルからは、どこの精神科医やカウンセラーが書いたのかな?と思わせるものでしたが…なんと、住職をされているお方です。詳細は本書より以下引用します。
南直哉(ミナミジキサイ)
1958年、長野県生まれ。禅僧。青森県恐山菩提寺院代(住職代理)、福井県霊泉寺住職。早稲田大学第一文学部卒業後、大手百貨店勤務を経て、1984年に曹洞宗で出家得度。同年から曹洞宗・永平寺で約20年の修行生活をおくる。
時々、仏教用語をもちいて人生との向き合い方についてお話されていますが、難しい内容は一切ありません。小児ぜんそくで幼い頃から入退院を繰り返してきた著者は、自分の存在について、生と死を間近に感じながら考えることが多かったそうです。抱えてきた悩みをどう扱うか、仏の道に出会い、これだ!と救われた…と話していますが、「仏教ほど救いのない、ヤバい宗教はありません」と言いきっている所も面白いポイントです。それは何故か?読んでみると納得でした。
「仏教そのものを学ぶ本ではなく、こだわりや執着から起こる苦しみの正体を知り、その取扱い方を知るための本」との事。
2022年出版、定価税込み1430円、ページ数 240pのコンパクトサイズ(CDケースよりもちょっと大きいかな?程度)。『禅僧が教える心がラクになる生き方』を改題して一部加筆・修正したもののようです。
「どうしようもない感情」がすっきり解決する38の秘けつ、を紹介している!
サブタイトルも魅力的ですね。「人生でなにか達成しなければ」「生きる意味が分からない」、人間は色々と悩んでしまいがち。でもどうしようもない。そんな感情が解決するならぜひ秘けつを知りたい!そう思いますよね。
出版社アスコムのサイトに目次が掲載されているので、ここでもご紹介します。
目次の内容を見ただけで、自己啓発本のような、時間を無駄にせず前向きにいこう!なんて内容とは真逆だと、お分かり頂けると思います。今まで世間で求められてきたような理想論っていったい何だったの…?と目からウロコなお話が満載です。
2.この本を読んで欲しいのは、こんな人
私がこの本を読んだ時、「大体の悩みの正体って大昔から既に仏教で説かれてきたのか…人間はいつの時代も悩み続けてきて現代も変わってないということは、そもそも人間はずっと同じような悩みを抱えて生きるものなのだなぁ」「ということは悩みを抱えないこと自体、大昔から人間は無理な話ということか」と妙に納得しました。そして、この本を読みながら、カウンセリングを受けた後のような、ちょっとホッとする受容された感覚も得ました。
以下に当てはまる人達は、きっとこの本を読んでみて、救われることが多いと思います。
・漠然と人生を生きることに焦りや不安を感じている、何のために生きればいいか分からない
・人生の目標を掲げているが到達できない自分はダメだと落ち込んでいる
・人間関係で些細なことで怒ってしまう、感情的になると周りが見えない
・大切な人を亡くして後悔の念がやまない
いろんな感情で心や思考がもつれた状態を、どうやって解きほぐして整理するとよいか、を知ることが出来ます。著者の言葉と自分を照らし合わせながら読んでみてください。この本を読む最中は、まさにカウンセリングに似た心の変化の過程をたどることでしょう。
いま既に、夢と信じるものに向かって、なりたい自分になっている人。自分の現状に満足している人。目標に向かって努力し続けている最中で、不安を感じることなく前向きな人。・・・これらの人にとっては、不向きな内容かもしれません。
なぜなら、そのような人達は前向きに生きることに疲れていないからです。
タイトル通り、「前向きに生きる」ことに疲れたな、と感じている人達にとって、“生きる意味なんて最初からないんだ、たまたま生まれただけなんだから。目標なんてなくても生きていけるんだよ。” という本書のメッセージは大きな救いになるでしょう。チャレンジすることが悪いことではありません。他者と比べられながら大人になった過程で、私たちは前を向いて頑張ることばかり正解のように教育されてきましたが、そのレールにのれない時には大変な苦悩を強いられます。少なくとも、この本は、そんな苦悩を感じる人達にとって、味方となってくれるでしょう。
3.臨床心理士が考える、前向きになれない日のやり過ごし方
どうせなら前向きに生きていたいけど、落ち込んだ気分でどうしようもない…そんな日もあります。ポジティブな考え方に切り替えることは簡単ではありません。でも、ずっと落ち込んでもいられないですよね。前向きになれない日をとにかくやり過ごす!そのために必要なことは…自分自身を癒すことが出来る方法を学んでおくこと。人によりますが、例えば↓
・「私、なにも出来ない」→「私、起きて布団から出られた」とポジティブな言葉を使って自分を特別扱いする
・栄養バランスの取れた食事、良質な睡眠を取る(基本的な生活習慣は崩さない)
・散歩する、アロマを焚く、マッサージをする
・今いる空間から移動して、違う風景を見て気分を切り替える
・映画を見る、好きな音楽を聴く
セルフケアは、日頃から自分にとって最適な方法を少しでも把握しておくことが重要です。上記の例は大抵の人には概ねセルフケアとして活用できるものかと思いますので、自己流にアレンジをして自分を労わっていきましょう。ポジティブな気分の自分、ネガティブな気分の自分、どちらも大事なあなたです。いろんな気分の波や感情をもつ自分を認めてあげましょう。それが、人間ですから。
4.最後に
いかがだったでしょうか?詳細な内容は本を読んで頂きたいので省きましたが、お手元にあると安心できる本だと思います。「そのままで十分」と自分を認めながら、冷静に人生を考えるきっかけも与えてくれます。いつも明るく元気に前向いて!という風潮や、こうあらねば…という思考に疲れた時、心を癒すためにもご一読ください。
今後も人生において読んでおくと心のケアに役立つ書籍をご紹介していきます!お楽しみに^^
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