毎日様々な考えに追い立てられて、仕事も学校もプライベートも、なんだか息が詰まりそう…悩み事に囚われて休めない…。そんな時に、【マインドフルネス瞑想】を試してみると、心が穏やかになり、余裕が生まれてくるかもしれません。
マインドフルネス瞑想とは?
マインドフルネス(mindfulness)の意味
「マインド(心)」が「フル(完全)に働いている」こと
⇨気づく(認識する)機能が十分に発揮され、思考が勝手に働きはじめなければ、現状を正しく受け入れられる。
いま、この瞬間に起こっている感覚・感情・思考に気づき、ありのまま受け入れた状態が「マインドフルネス」。
人間は何をするにも、現状に“気づく”だけでなく、すぐに様々なことを思い悩んで考え、状況を複雑にして深みにはまりが ちです。そこで、“思う”、“考える”、という心の働きが余計なことをせず、もっとシンプルに状況を捉えられたら、悩むことは減ります。
マインドフルネス瞑想とは、「いま、この瞬間に起きていることに集中し、余計な考えにとらわれない状態」になるための瞑想です。
ルーツは“仏教”と“医学”
マインドフルネス瞑想には、仏教と医学の2つのルーツがあります。仏教では「無我」の教えを説いて「悟り」を目標にしますが、医学では「ストレス軽減・病気の治療」に重点をおきます。重視する点はそれぞれ異なりますが、仏教で伝わるブッタの瞑想がマインドフルネスの骨組みとなっており、それをもとに医学的なプログラムが開発され、現代のマインドフルネス瞑想を発展させてきた経緯があります。
- 仏教の教えとして、ブッタの瞑想が心を広く開放し、悩みから解放されるものとして、インド→中国→日本と広く伝わった。ブッタの瞑想は心の機能を整える効果があるとされ、様々な地域での各分野に広がっていった。
- インド→スリランカなどを経て、アメリカにも仏教の瞑想が伝わる。アメリカのマサチューセッツ大学のジョン・カバットジン博士が、仏教の瞑想をもとにストレス低減を目指した医学的プログラムを作成。全世界にマインドフルネス瞑想の効果を伝えた。
抑うつや不安解消の治療法・ビジネス界でも思考法として活用
医学的には元々、慢性疼痛の緩和のためにマインドフルネス瞑想を使用していました。瞑想を取り入れたプログラムが痛みを和らげる効果があると脳画像検査などにより解明されると、糖尿病などの慢性疾患のストレス低減や、うつ病や摂食障害などの精神疾患の治療にもマインドフルネス瞑想が広まっていきました。
瞑想は本来、日常的に心の働きを整えるものですが、病気による痛みやストレス、精神的不調などを和らげるための方法としても医学分野で活用されるようになったのです。
ビジネス業界では、マインドフルネス瞑想がストレス解消につながる、ということから、元来のマインドフルネス瞑想をアレンジした取り組みを行っている場合が多いようです。仕事の進捗や職場の人間関係などの課題も、瞑想を活用して解消できる部分があると見込まれています。
瞑想で余計な考えにとらわれなくなると、仕事の生産性があがる・瞑想によって考えが整理できて仕事の優先順位がつけやすくなる、とされています。
瞑想の仕組みと効果
なぜ瞑想で悩みが消える?
そもそも、人が悩んでしまうのは、「自分の欲求にとらわれている」から。
「もっとこうなったらいいのに」と理想を追い求めて、思いが叶わないと悩みはじめてしまう。期待外れに不満が出る。
どんな人でも生きていると悩みはつきものです。「もっと成績をあげたい」「美味しい物を食べたい」という願望、「もっと相手を傷つけない言い方をしたかった」「また失敗するかもしれない」という後悔や不安、「家族には何でも打ち明けるべき」「恋人なら相手の期待に応えるべき」という固定観念・・・。これらの思いを実現しようとして出来なかった時、嫌な気分になり、悩みにつながっていきます。
実は、人は目の前のこと、過去、将来の予定など、あまり意識せずとも、常に考えています。
何か物事に直面した時、「○○であってほしい、そのためにはどうしたら…?」と考え始めて止まらなくなる人は、欲求にとらわれて悩みを深めていっている状態にあります。そうすると、考えたくない時まで、あれやこれやと自動的に考えが生まれ、過去起きた失敗が思い出されたり、失敗するに違いないと未来のことにまでとらわれてしまいます。
そのため、不安がつのり、何度も確認作業をしたり、早口になったり、その場から逃げ出したり…と行動にまで影響していくのです。これがドゥーイング・モードです。
常に何かを考えたり、行動しようとしたりする状態を「ドゥーイング・モード」と呼ぶ。ドゥーイング・モードで心に積もった余計な考え事が、不安や心配になり、悩みの源となる。
いま、に意識が向かない状態なので、例えばプレゼンで準備万端に練習してきても失敗の不安がよぎり、せっかく相手が笑顔で聴いているのに、この瞬間に起きていることに気づかなくなります。
人生において悩みはつきものではありますが、何も考えなくていい瞬間もあります。例えば、お風呂に浸かって体の感覚に意識を向けていると、ふとボーっとして無の状態である瞬間が生まれます。この状態の時は、過去や将来について余計な考え事はしてません。これがビーイング・モードです。
考えに反応せず、あるがままでいる状態を「ビーイング・モード」と呼ぶ。【いま・ここで】生きていることに気づき、目の前の現実に集中出来れば、悩みは深まらずに済む。
マインドフルネス瞑想で「ドゥーイング・モード」と「ビーイング・モード」を切り替えると、悩みを生む考えから意識を逸らし、悩みにとらわれなくなります。
瞑想をすることで、身体感覚に意識を向け、ビーイング・モードに切り替えます。そうするとネガティブ思考の流れが止まり、不快な悩みも元々は一瞬心に湧きでた感覚の一つに過ぎない・悩みを大きくしたのは自分の考えだ、と気づくようになります。
瞑想による本来の効果3つ・二次的な効果5つ
マインドフルネス瞑想を繰り返し行い続けると、瞑想をしていない時でも、不安などの余計な考えを気にせず隅に置いておくことが出来るようになります。瞑想の主な効果は以下の3つです。
- 瞑想をすると余計な考えが沢山あることに気づき、次の瞬間には消えると分かってくる。悩みは自分が生み出していた欲求なのだ、と気づく。
- 考えを放置する経験により、視野が広がり、目の前の物事を柔軟にとらえられるようになる。
- 余計な考えに振り回されず、悩みを引きずらなくなっていく。
これらの効果の結果として、余計な考えをもたなくなり、仕事や人間関係などが円滑になり、日常生活に変化が出てきます。瞑想で元々あなたに備わっていた力が発揮されるようになるのです。変化の現れ方は個人差がありますが、主な二次的な効果は以下の5つです。
- 余計な不安や心配を気にせず、目の前のことに集中できるため、集中力・発想力・判断力が高まる。
- 人をみる時に先入観や過度な心配をもたずに済み、人間関係で必要以上にわずらわされることが減る。
- 過去や未来でなく、いま目の前にあるものを楽しめるようになる。
- 寝る前に考えすぎて朝起きられない人は、夜眠るのも朝起きるのも楽になっていく。
- 嫌な思いを引きずることが減るため、生活上のストレスが緩和され、気の休まる時間が持てるようになる。
マインドフルネス瞑想の具体的方法
初心者向け【まずは自宅で朝10分間・2~3週間続ける】
瞑想と聞くと、お寺で座禅を組んで心を静めるイメージがあるかもしれません。マインドフルネスでは日常の中でちょっとした時間で瞑想を取り入れます。考えではなく、体の感覚に意識を向ける、ということを、いくつかの方法で行います。瞑想するには集中力が必要なので、初めのうちは朝や昼の集中できる時間帯を選びましょう。
特別な道具は必要ありませんが、環境を整えた方が意識を切り替えやすくなる人もいます。以下を参考に自分に合うものを試してみてください。
- ストレッチで体をほぐしておく
- ネックレスや時計など装飾品は体から外し、動きやすい楽な服装で
- 瞑想用のスペースをつくり、マットを敷いたりお香をたいたりする
- 座りやすい椅子や座布団を用意して同じ姿勢を取り続けた時の体の負担を軽くする
最初のうちにおススメなのは、朝起きた時間から10分間、布団の上でゆったり横になった状態か座った状態での瞑想です。布団と触れている肌の感触、温度、におい、心臓の音、呼吸など、様々な感覚に意識を向けて心の中で実況します。
・「布団がふわふわだ」「おしりがあったかいな」「腕がかゆい」「湿気の匂いがする」「心臓がドク、ドク、ドク…」「冷たい空気が鼻から入ってくる」と心の中で言葉にする
・「今日出勤したら資料コピーしなきゃ」など考えが浮かんだ時は、「考えが浮かんだな」と実況するだけしてスルーし、ひたすら体の感覚に意識を向け、感覚の変化を実況することを繰り返す
慣れてきたら…【厳選4つ】瞑想法を組み合わせて
瞑想には、動かない瞑想(呼吸の瞑想など)と、動く瞑想(食べる瞑想など)があります。自分に合う瞑想を見つけましょう。これらを組み合わせることで体への意識を変えやすくなり、自分の状態に気づきやすくなります。
①食べる瞑想・飲む瞑想
日頃食べている物や飲み物を、ひとくちずつ、ゆっくり口に入れます。見た目の色や形、香り、食感など、よく観察して、「やわらかい」「香ばしい香りだな」などと心の中で実況します。食べたい欲求に流されずに瞑想を続け、ゆっくり食べる時・飲む時の動作も「手を伸ばします」「コップを持ち上げます」などと実況します。そして、口の中に広がる感覚に意識を向けて実況することで、美味しさを何度も感じられるようになります。
五感を働かせて食べ物や飲み物を堪能しつつ、“食べたい・飲みたい”という欲求を放置する練習です。これを繰り返すと、心の中が整理されて、意図せず食べ過ぎたり、過剰に選り好みして食べたりすることが減ります。そうすることで、食べる・飲むこと自体が楽しくなります。
一度レーズンを噛むごとに食感が変わることにも意識を向けましょう。私は院生時代に練習でグミを一粒口の中で転がしながら食べて瞑想しました。ケーキやビールなど広く人の好物になるものは欲求を刺激しやすいため、瞑想の練習には不向きです。
②呼吸の瞑想
マインドフルネス瞑想の基本です。楽な姿勢で10分間呼吸に意識を向け続けましょう。鼻の穴か、お腹に意識を集中させ、空気の出入りを感じてください。全ての注意を呼吸に向けるうちに、心が落ち着いていきます。
「仕事の〆切が…」など雑念が湧いても「仕事の考えが浮かんだ」と認識して放置し、再び呼吸中の体の動きに集中する
呼吸を意識の中心にすることで、考えようとしなくても考えが浮かんでくることが分かったり、心配事などの考えを気にし過ぎなくなります。基礎的な瞑想なので、毎日10分続けてみましょう。
③座る瞑想・立つ瞑想
座る・立つ、という普段は一瞬で終わらせてしまう動作を、1分以上かけてゆーーーっくりおこないながら、体の感覚を実況中継する瞑想です。体の感覚:実況中継=9:1、の割合で集中しましょう。太ももや腰など、座る・立つ動作に伴って生じる体への負荷をその瞬間ごとに意識します。自分の体の状態に合わせて、膝や腰に痛みのある人は無理せず取り組みましょう。
腰が痛い、足がきつい、など感じますが「痛み」「重み」とだけ実況しましょう。「つらい」「イヤだ」など評価はしないようにします。これは体の感覚ではなく、感覚から生じた自分の感情や思考だからです。
④歩く瞑想
まずは室内の廊下や部屋など、数メートル歩く距離を取れる場所で、行き先の目的は設定せず、5~10分かけてゆっくりと歩きます。歩く事にひたすら集中する瞑想です。慣れてくれば、公園や移動中でも取り組めますが、人の多い場所だとゆっくり歩いていると誰かにぶつかってしまうので、要注意です。
歩く時に仕事や家事の段取りを考えたり、悩みながら下を向いていたり…考えながら行動する人にはおススメの瞑想です。次第に視野が広がり、考え過ぎることが減ったり、今まで気づかなかった景色が見えたりします。
いかがでしょうか?これまで例に挙げた瞑想法は一部のものですので、もっと掘り下げて瞑想を学びたい方は最後に紹介する文献をご参照ください。 つまり、瞑想法を取り組むと悩みが深まらない、そのメカニズムはこちらです↓
瞑想で「感覚に気づく」「考えに反応しない」練習する
➤何も考えないビーイングな時間が生まれ、考えをコントロールできるようになる
うまくできない時の対処
そうは言っても、「やってみたけど本当にこれでうまく出来てるの?」「どうしても気になる事が頭をよぎってしまう」「疲れて眠たい」など、瞑想をやってみても、初めはうまくいきません。
疲れや眠気がひどい時は、思い切って瞑想は休憩しましょう。
雑念が浮かんで来たら、「ああ、〇〇が気になる・・・そうだ、わたしは今〇〇について気にしてるんだ」と、雑念に気づいた自分に気づきましょう。それだけで瞑想は前進できています。
家族や友人、職場の同僚など、瞑想について一緒に取り組める人達と、感想を話し合ってみましょう。孤独に頑張っている辛さがある時には、一人で抱えるよりも誰かと共有する方が楽になります。
瞑想は、成功が目標ではない。結果を気にせず実践するのみ!毎日続けることこそが積み重ねとなり、人生の充実感へ。
さいごに
ここまで、マインドフルネス瞑想について、その歴史から具体的な方法までを簡単にご紹介しました。
より詳細に学びたい方は、こちらの本が大変おススメですのでご覧ください!(大半はこちらの本を参考にご紹介させて頂きましたが、図で見やすく書いてありますので理解しやすいです)
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日々の生活が少しでも楽に、人生が満足いくものになるように、少しでも試してみてはいかがでしょうか。